株式会社Rememberの取り組みについて

株式会社Remember代表・前川航太朗からの情報発信です。

2. 障害者支援制度を活用すること

 ひきこもり・不登校当事者に対しての支援体制と、障害者に対しての支援体制には、実は雲泥の差があります。

 

 ひきこもり若者や不登校児に対しての財政的な支援基盤はありません。そのため、任意団体やNPO等の団体が、寄付金や補助金の範囲内で活動するか、または高額な利用者負担額を財源にして活動を続けているのが現状です。

 

 前者の場合は、当事者が無料もしくは低料金で利用することができる反面、団体の活動資金が乏しいことが多く、どうしても活動内容に制限があります。後者の場合は、高収入世帯に限られた支援となりがちです。

 

 こうした観点で比較すると、障害者福祉の分野はきちんとした財政的な支援基盤があります。障害者総合支援法に基づいた様々な支援サービスが用意されている為です(詳細については厚生労働省のホームページをご参照ください)。

 

 私たちの活動は、ひきこもり当事者に対しての訪問活動からスタートしました。ここで言うひきこもり当事者とは、様々な要因が重なって結果的に社会から孤立して未就労の状況が続いている方たちを指すものとします。

 

 会社活動を開始した当初は、私一人でひきこもり当事者の訪問活動を行っていましたが、約半年間の活動を経て、主に以下に示す3つの理由から訪問活動を止めることに至りました。それぞれの理由について、簡単に説明します。

 

①当事者の家庭内での支援には限界がある

 家庭内という限られた場での支援には2つの問題があります。一つ目は親の影響力が強い環境であること。二つ目は、社会から孤立した環境に長く居続けることで、当事者が自分の価値観が正しいと思い込んでしまうことです。

 

 一つ目については、正直なところ素晴らしい親もいれば、子の成長を阻害してばかりの親もいます。特に後者の場合、親の子に対する圧力や欲望が、子の成長にとって阻害要因になっているケースが多く見受けられます。

 

 この問題については後日詳しく説明したいと思いますが、とにかく親子関係を改善していくことが支援の肝と言えます。そして、これを行っていくためには、ある程度の親子の距離感を取ることが可能となる家庭外の居場所を確保することが必要です。

 

 また二つ目については、親との関係性を断絶して家庭内で孤立するタイプの方がいます。この場合、自分の価値観や判断基準がすべて善だと勘違いしてしまう危険性があります。マイワールドが出来上がってしまうのです。

 

 こうした方に多く見られるのは、社会に出て上手くいかないときに、すべて社会や他人のせいにする態度です。周りの人たちに対して、どうして分からないのだと責め立てる態度や、感情的になって暴れたり泣いたりすることも見受けられます。

 

 次の②でも説明しますが、誰もが多様性の中で本当の自分らしさに気付くことができます。自分は正しいという思い込みに浸らないためにも、家庭外の居場所を確保することが大切なのです。

 

②正しい成長のためには多様性が必要

 単独での訪問支援を行っていて、危険だと感じたことは、当事者が支援者の色に染まってしまう可能性が高いということです。

 

 現にひきこもり状態の若者たちは、親以外の人との交流が絶たれている状況です。当事者にとっては、自分を理解してくれる支援者が自分の世界に入って来て、その存在を受け容れるということは、私たちの想像以上に彼らにとっての大きな影響力を持つ存在となるということです。

 

 例えば、憧れを持たれたり、恋心を持たれることは普通にあることです。こうなると、彼らは自分らしく成長することよりも、支援者のようになりたいと思ってしまうことも少なからずあり得ます。

 

 これは、動物に例えていうならば、犬が猫になりたいと言っているようなものです。しかし本当は、犬は犬らしく、猫は猫らしく成長することが望ましいはずです。

 

 支援者の役割は、当事者に自分らしく成長してもらうために必要な支援を行うこと。この役割を果たすためにも、単独での支援というのは初期の頃だけに留めるべきです。やはり、人は様々な人がいる中で、多様性が担保された環境で育まれることが望ましいのです。

 

 多様性の中で、様々な経験を積み、自分と他人との違いを客観的に認識できるようになることで、社会復帰に必要である社会性を身につけることができるからです。

 

③支援に関わる費用負担できる家庭は少ない

 実際に訪問活動をして分かったことは、ひきこもり・不登校状態の子どもに対して、月額数万円以上のお金を支払うことのできるご家庭が少ないという事実です。

 

 これは、単に経済的な状況という問題だけでなく、親の子に対する愛情問題という本質的な問題でした。支払える経済的状況であっても、子のために支払いたくないという親の本音が出ることもありました。本当に悲しいことですが。

 

 子が支援を望んでいても、親の都合で支援を継続できなくなることが実際に起きたのです。もちろん、子には支払い能力がありません。かと言って、私もボランティアでは活動を継続することができません。

 

 ここで思い至ったのは、やはりこうした福祉的活動は、国の制度を活用しなければ持続可能性が担保できないということでした。そして、なるべく無償で毎日でも利用できる支援環境を整備することが必要だと思い至った訳です。

 

 以上の理由から、現在の障害福祉サービス事業所の運営に思い至ったという訳です。

 

  (従前の訪問活動)    →    (現在の通所型施設)

   家庭内での支援     →    家庭以外の場所での支援

  単独支援者による支援   →  多様性が担保された環境での支援

 有償(または高額)の支援  →     無料(または低額)の支援

 

 つまり、ひきこもり等の理由で未就労の方たちを支援できる環境整備を行う為に、障害者支援の制度を上手く活用することを選びました

 

 そうして、当事者にとって必要な支援を無料で提供できる環境整備を行うことが可能となりました。
 (※ただし、前年度収入が約100万円以上ある方は月額9,300円かかります)

 

 実際に、うちの事業所に見学に来られる方には、病院への受診歴もなく、障害者手帳なども未所持の方も多くいらっしゃいます。そうした場合でも、社会復帰に向けて本気の方に対しては、病院の紹介や手帳取得の手続き等のサポートから行っています。

 

 病院の受診歴がない方ともなると、本契約まで必要な時間は9〜10ヶ月にも及びますが、当事者の意志を尊重して受け容れを行っています。もちろん、本契約前の期間でも料金はいただいておりません。

 

 それは、私たちの活動は障害者支援という観点から始めた訳ではなく、ひきこもり・不登校児などの社会から孤立した方のために始めた活動であるからです。

 

 以上に述べたように、障害者支援制度を活用することによって、ひきこもり等の理由から未就労の方の中で、本気で社会復帰を目指している方は誰でも訓練をすぐに受けることのできる環境を整備しました。

 

 長い記事となってしまいましたが、本当にこのような場所を求めている当事者に届くことを願っています。